省エネ基準達成率100%は省エネ?炊飯器の基準は2008年度のまま
炊飯器の「省エネ基準達成率」の読み方
- 5.5合9機種の達成率は100〜112%。国のデータベースに登録された40機種も全部が基準に届いており、達成率で機種を絞る効果は小さい
- この%は2008年度に置かれた基準への到達度。目標年度が終わったのは2009年3月31日で、17年4か月前
- 基準値は機種ごとの蒸発水量で変わる。達成率の順に並べても年間電気代の順にはならなかった
炊飯器のカタログにある省エネ基準達成率は、5.5合炊き9機種で100〜112%でした。大手6社の公式仕様ページで確認した値です。
ただしこの%は、省エネ性能そのものの順位ではありません。2008年度に置かれた基準に、その機種がどこまで届いたかを表す数字です。目標年度の2008年度が終わったのは2009年3月31日。この記事を書いている2026年8月5日から17年4か月前です。
こめきち「%が大きいほど省エネ、とは書いてあります。ただ、何に対して大きいのかを先に見てください」
5.5合炊き10機種の達成率
すべて最大炊飯容量1.0L(5.5合)の機種です。達成率と年間消費電力量はメーカーの公式仕様ページに載っている値、年間電気代は「年間消費電力量×31円」でこちらが計算したものです。
| 機種 | 加熱方式 | 区分 | 達成率 | 年間消費電力量 | 年間電気代 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東芝 RC-10RXB | 真空IH | B | 112% | 83.2kWh | 2,579円 |
| 象印 NW-NB10 | 圧力IH | B | 110% | 76.5kWh | 2,372円 |
| 日立 RZ-W100JM | 圧力&スチームIH | B | 103% | 81.4kWh | 2,523円 |
| 日立 RZ-V100JM | 圧力&スチームIH | B | 103% | 81.4kWh | 2,523円 |
| パナソニック SR-N610E | 可変圧力IH | B | 102% | 86.6kWh | 2,685円 |
| タイガー JPV-Y100 | 圧力IH | B | 102% | 93.5kWh | 2,899円 |
| パナソニック SR-X910E | 可変圧力IH | B | 101% | 85.3kWh | 2,644円 |
| 象印 NL-DB10 | マイコン | F | 101% | 82.9kWh | 2,570円 |
| 東芝 RC-10ZWA | 真空圧力IH | B | 100% | 87.7kWh | 2,719円 |
| 三菱電機 NJ-BW10J | IH | B | 仕様ページに記載なし | 記載なし | ― |
三菱電機のNJ-BW10Jだけ、仕様ページに達成率も年間消費電力量も見当たりませんでした。区分名Bと「2008年度基準」の文字はあります。この機種の値は資源エネルギー庁のデータベースのほうに登録されていて、年間85.4kWh・達成率100%でした(後で使います)。
一番上の112%と一番下の100%で、年間電気代の差は140円。9機種ぜんぶを見ると2,372〜2,899円で、上下527円の幅でした。
達成率の順に並べても、電気代の順にはならない
問題はここからです。表を達成率の高い順に並べてありますが、右端の金額は素直に増えていきません。
- 達成率112%の東芝RC-10RXBは83.2kWh。110%の象印NW-NB10は76.5kWhで、年207円安いほうです
- 達成率103%の日立RZ-W100JMは81.4kWh。112%の機種より年56円安く済みます
- 同じ102%のタイガーJPV-Y100(93.5kWh)とパナソニックSR-N610E(86.6kWh)は、年214円ちがいます
達成率の順に並べても、年間電気代の順にはなりませんでした。同じ%の2機種が年214円ちがい、%が低いほうが安い組み合わせもあります。なぜこうなるのかは、基準そのものの決まり方に理由がありました。
基準値は、区分ごとではなく機種ごとに違う
達成率は、省エネ法のトップランナー制度で決まっています。経済産業省の告示(平成18年3月29日 経済産業省告示第62号)に、基準エネルギー消費効率の算定式が書かれています。
| 加熱方式 | 最大炊飯容量 | 区分名 | 算定式 |
|---|---|---|---|
| 電磁誘導加熱(IH) | 0.54L以上0.99L未満 | A | EK=0.209M+48.5 |
| 電磁誘導加熱(IH) | 0.99L以上1.44L未満 | B | EK=0.244M+83.2 |
| 電磁誘導加熱(IH) | 1.44L以上1.80L未満 | C | EK=0.280M+132 |
| 電磁誘導加熱(IH) | 1.80L以上 | D | EK=0.252M+132 |
| それ以外(マイコン等) | 0.54L以上0.99L未満 | E | EK=0.209M+36.7 |
| それ以外(マイコン等) | 0.99L以上1.44L未満 | F | EK=0.244M+75.6 |
| それ以外(マイコン等) | 1.44L以上1.80L未満 | G | EK=0.280M+99.0 |
| それ以外(マイコン等) | 1.80L以上 | H | EK=0.252M+122 |
EKが基準エネルギー消費効率(kWh/年)、Mが蒸発水量(g)です。ここが肝心なところで、式にMという変数が入っています。区分が同じでも、Mの値が違えば基準値そのものが変わります。
蒸発水量の定義も告示に書いてあります。炊飯直前に米と水をセットした本体の重さから、炊飯終了1分以内・ふたを開ける前の本体の重さを引いた値。つまり炊いているあいだに本体の外へ出ていった水の重さです。
達成率は「基準値÷その機種の年間消費電力量×100」で出ます。基準値は、その機種に許される年間消費電力量の目安と考えると分かりやすいです。水をたくさん外へ逃がした機種ほど基準値が大きくなり、許容枠が広がります。同じ電力量を使っていても、枠の広い機種のほうが%は大きく出ます。
蒸発水量は仕様ページになく、国のデータベースにある
では自分の候補機の蒸発水量はどこで見られるのか。今回、6社の仕様ページを見た範囲では、蒸発水量はどこにも載っていませんでした。消費者庁の電気機械器具品質表示規程では、最大炊飯容量・区分名・蒸発水量・年間消費電力量などが表示すべき事項に入っているのですが、ウェブの仕様表からは見つけられませんでした。
見つかったのは資源エネルギー庁の「省エネ型製品情報サイト」です。ジャー炊飯器として40機種(色ちがいの型番を含む)が登録されていて、そこには蒸発水量の欄があります。登録されている型番は各社の最新ラインアップとずれがあるので、上の表とは顔ぶれが変わります。5.5合クラス(区分B)から抜き出すと、こうなります。
| 型番 | 蒸発水量 | 基準値(式で計算) | 年間消費電力量 | 達成率 |
|---|---|---|---|---|
| 日立 RZ-V100KM | 3.7g | 84.1kWh | 81.4kWh | 103% |
| 象印 NW-NC10 | 5.0g | 84.4kWh | 76.5kWh | 110% |
| タイガー JRL-A100CK | 5.6g | 84.6kWh | 84.0kWh | 100% |
| 象印 NX-AB10 | 9.7g | 85.6kWh | 81.3kWh | 105% |
| 東芝 RC-10HPA | 23.8g | 89.0kWh | 82.4kWh | 108% |
| タイガー JPW-K100KV | 38.9g | 92.7kWh | 88.2kWh | 105% |
| タイガー JPV-M100KG | 50.0g | 95.4kWh | 93.5kWh | 102% |
| 三菱電機 NJ-VW10J | 52.1g | 95.9kWh | 93.3kWh | 102% |
区分Bに登録されている27機種の蒸発水量は3.7〜52.1gで、14倍の開きがありました。式に入れると基準値は84.1〜95.9kWh/年になります。同じ区分Bのなかで、許容枠が11.8kWh/年ぶん、金額にして366円ぶんちがう計算です。
告示の式と登録値から達成率を計算し直したところ、登録40機種のすべてで公表値と一致しました(小数点以下は切り捨て)。「達成率=基準値÷年間消費電力量×100」という読み方で合っていて、そのうえで基準値が機種ごとに違う、ということです。
同じメーカー・同じ容量でも逆転する
いちばん分かりやすいのは、タイガーの2機種です。どちらも最大炊飯容量1.0L、区分Bです。
| 型番 | 蒸発水量 | 達成率 | 年間消費電力量 | 年間電気代 |
|---|---|---|---|---|
| JRL-A100CK | 5.6g | 100% | 84.0kWh | 2,604円 |
| JPW-K100KV | 38.9g | 105% | 88.2kWh | 2,734円 |
達成率が5ポイント高いほうが、年間電気代は130円高い。同じメーカー、同じ容量、同じ区分で、この順番になります。JPW-K100KVは蒸発水量が7倍近いぶん基準値が緩く、電力量では負けていても%では勝つ、という構図です。
同じ105%どうしでも、象印NX-AB10(81.3kWh・2,520円)とタイガーJPW-K100KV(88.2kWh・2,734円)で年214円ちがいました。%が同じでも中身は同じではありません。
こめきち「%は、その機種に割り当てられた線をどれだけ越えたか。線の高さは機種ごとに違います」
炊飯器に統一省エネラベルは付かない
家電量販店で見かける★つきのラベル、あれは統一省エネラベルです。資源エネルギー庁のページに対象が書かれていて、照明器具、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気便座、テレビ、エアコン、電気温水機器、ガス・石油温水機器の8つ。ジャー炊飯器は入っていません。
炊飯器が対象なのは、もう1つの省エネルギーラベルのほうです。こちらは省エネ性マーク(達成していれば緑、していなければオレンジ)・省エネ基準達成率・エネルギー消費効率・目標年度の4つを表示します。★の多段階評価や年間の目安電気料金は付きません。
売り場で炊飯器の★を探しても見つからないのは、そもそも制度の対象外だからでした。
目標年度が2008年度のままである、ということ
資源エネルギー庁の省エネ型製品情報サイトは、機器ごとに目標年度を持っています。並べるとこうです。
| 機器 | 目標年度 |
|---|---|
| エアコン | 2027年度 |
| 電球 | 2027年度 |
| テレビ | 2026年度 |
| エコキュート・ガス温水機器・石油温水機器 | 2025年度 |
| 電気冷蔵庫・電気冷凍庫 | 2021年度 |
| 照明器具 | 2020年度 |
| 電気便座 | 2012年度 |
| ジャー炊飯器 | 2008年度 |
炊飯器の2008年度は、電子レンジ・ガスオーブンと並んで古いほうです。告示が出たのは2006年3月29日で、20年4か月前。その後も改正はされていますが(直近は令和5年3月28日)、目標年度は2008年度のまま置かれています。
この基準がどれくらいの水準かも、資源エネルギー庁が書いています。目標年度の2008年度において、2003年度比で約16.7%の効率改善。達成率100%とは、2003年度の水準から16.7%ぶん改善した線に到達している、という意味になります。2026年の最新技術に対する評価ではありません。
達成率100%は「不合格すれすれ」ではない
もう1つ、%の読み方でずれやすいところがあります。この基準は1機種ごとの合否を決めるものではありません。
告示にはこう書かれています。メーカーは、目標年度以降の各年度に国内向けに出荷する炊飯器のエネルギー消費効率を、区分ごとに出荷台数で加重平均した値が、基準値を加重平均した値を上回らないようにすること。判定の単位は「メーカーの年間出荷の平均」です。勧告や命令の対象になるのも、年間の生産量・輸入量が6,000台以上の事業者に限られます。
そして実際のところ、資源エネルギー庁に登録されている40機種の達成率は100〜113%で、基準に届いていない機種は1つもありませんでした。達成率100%は「かろうじて合格」ではなく、この制度で並んでいる機種の下端、というだけです。
達成率で候補を絞ろうとしても、全部が同じ側にいるので絞れません。
結論:達成率は2008年度基準への到達度
省エネ基準達成率は、次の3つを押さえて読むと事故が起きません。
1. 同じ区分の中でだけ比べる。区分が違えば算定式そのものが違います。区分名は仕様表に書いてあります
2. 同じ区分でも、基準値は蒸発水量で変わる。%の順は電気代の順ではありません
3. 電気代を知りたいなら、年間消費電力量(kWh/年)を直接見る。こちらは全機種同じ単位です
今回の9機種では、年間消費電力量の上下差は17.0kWh/年、金額で527円でした。5年で2,635円です。達成率という遠回りをせず、kWhの数字を見比べたほうが早く、しかも正確でした。
達成率が使えるのは、同じ区分・同じくらいの蒸発水量の機種を並べたときだけです。ところがその蒸発水量が仕様ページに載っていないので、実際の売り場では確かめようがありません。
この記事が向かないのは、達成率の高い炊飯器を選べば電気代が下がると考えている人です。今回集めた範囲では、達成率の順と年間電気代の順は一致しませんでした。
→ 炊飯器の電気代は1回いくら?5.5合10機種の公式値は4.3〜5.8円
金額はこの記事のための計算で、メーカーの公表値ではありません。実際の電気代は炊く量・コース・室温・契約している電気料金で変わります。
調査・編集:炊飯図鑑編集部。こめきちは記事の案内役のキャラクターです(実在の人物ではありません)。
この記事の調べ方と、分からないこと
数字は2026年8月5日に集めました。達成率・年間消費電力量・区分名は、象印・タイガー・パナソニック・日立・東芝・三菱電機の6社の公式仕様ページから取っています。蒸発水量と、政府への登録値は、資源エネルギー庁の省エネ型製品情報サイトのジャー炊飯器一覧(目標年度2008年度)から取りました。実機を買って測ったものではありません。
基準の中身は経済産業省告示の本文に当たっています。区分ごとの算定式、蒸発水量の定義、エネルギー消費効率が年間消費電力量であること、年間消費電力量の算定式と係数、測定時の取り決め(周囲温度23±2℃、電源電圧100±1V、通常炊飯コース、精米はコシヒカリ、3回測定の平均)は、すべて告示に書かれているとおりです。
計算はPythonで検算しています。①告示の算定式(EK=係数×蒸発水量+定数)に登録40機種の値を入れて達成率を再計算し、40機種とも公表値と一致することを確認(小数点以下切り捨て)。②年間電気代は「年間消費電力量×31円」。31円/kWhは全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価(令和4年7月22日改定)です。資源エネルギー庁のサイトが載せている年間電気代は27円/kWhで計算されているので、同じ機種でも金額は一致しません。
制度の切り分けも書いておきます。仕様表にある「1回当たりの炊飯時消費電力量」「年間消費電力量」「区分名」「蒸発水量」の表示は、家庭用品品質表示法にもとづく電気機械器具品質表示規程で決まっています。省エネ基準達成率のほうは省エネ法(トップランナー制度)の基準に対する到達度で、品質表示規程には出てきません。資源エネルギー庁のページにも、炊飯器の表示は品質表示法にもとづくもので省エネ法では規定していない、と注記があります。
分からなかったことも書いておきます。
- 蒸発水量が機種ごとに3.7gから52.1gまで開く理由は、告示からも仕様ページからも分かりませんでした。ふたの密閉や蒸気の逃がし方の設計差だろうとは想像できますが、確かめていません
- 6社のウェブ仕様ページに蒸発水量の記載を見つけられませんでした。本体表示や取扱説明書に載っているかまでは確認していません
- 表に載せた10機種のうち、政府のデータベースに同じ型番が見つからないものがあり、その機種の蒸発水量と基準値は確定できませんでした。表の基準値は、登録されている型番のぶんだけです
- 三菱電機NJ-BW10Jは、仕様ページに達成率と年間消費電力量の記載が見当たりませんでした。政府のデータベース側には登録があります
- 2008年度基準を見直す動きがあるかどうかは、今回の調べ方では見つけられませんでした
- 告示は令和5年まで何度か改正されていますが、算定式の数値が過去に変わったことがあるかどうかは、現行の本文だけからは分かりませんでした